「匂い」から学ぶ文化の違い


「香港って独特の匂いがあるね」妻が香港に降り立った時に開口一番発した言葉だ。


「香りは、その国の嗜好を表す。」という事を定義付けてみたい。


「嗅覚」と「味覚」が繋がっている事からも理由付けされるだろう。鼻を摘まむと味を感じる事ができないのはそれを
示す一つの事実である。


個人的な見解であるが、香港には大きく分けて3種類の独特の匂いがあると思う。1つ目は、街市*を筆頭に乾物・
魚の干物の生臭い匂い、2つ目は過度とも言える香料の匂い、3つ目は消毒剤の匂い。


* 街市(ガイシ):香港の卸売市場。野菜・肉・魚・乾物全ての食材がここで揃う。


生臭い匂いは、その食材を使って調理される香港料理の食文化をそのまま映し出していると言える。


香料の匂いは、石鹸やシャンプーそして、芳香剤といったものが挙げられるが、日本のそれの何倍もの効果を発揮
する程の強烈な匂いを放っている事が多い。


消毒剤の匂いは、良くホテルやマンションの中で感じるもので、「プールの匂い」と錯覚する。生臭い匂いが強烈で
あるが故に、香りを強くして、匂いを消すという効果を狙うという意図を感じさせる。


2つ目、3つ目の匂いから読み取れる事は、香港では「臭い匂いを消す事=清潔になる」と信じている事である。矛盾
するは、汚いトイレに強烈な芳香剤を置いた所で更に匂いが複雑怪奇極まりない匂いを作り出している事だ。


話しは逸れるが、香港では冬場でもタクシーの中、ビルの中と至る所で冷房が効いている。冷房により空気を換気
して目に見えないサービスを提供していると提供側は言う。


しかし、良く見ると冷房のフィルターは真っ黒なのである。現実は換気が換気になっていなのである。この矛盾
を受け入れる事から香港を理解する第一歩を踏み出せるのかも知れない。


ところで人間の鼻はどんなに臭い匂いにも順応する便利な機能を持っている。例えばどんなに臭い場所に行っても
最初は耐えられないと思っていても、繰り返しその匂いを嗅ぎ続ける事を通して感覚が和らぎ以前程の不快感は
感じなくなるのはその機能のお陰だ。


香港独特の匂いを敬遠する前にその匂いがもたらす副次的な効果を探ってみると案外と自然に受け入れられたり
するものだ。それに加えて人間には、先に触れた素晴らしい「順応性」がある。


香港に来たら、「ショッピング」「食事」も大いに結構であるが、それらに加えてもう一つ楽しみとして、街市や老舗の店
や通りを訪れ、「香港の匂い」を感じてみてはいかがだろう?